現在地のご案内 : トップ情景・製作 > 踏切の制御回路 新

自動踏切の制御回路(新) 鉄道模型共通  The control circuit of a crossing

自動踏切警報機・遮断機の新しいバージョンの制御回路についてです。(回路図あり)

1.新しいバージョンの制御回路の設計にあたって

 初回のときは、「怪盗列車」の ちだ様が、エレキジャックNo.6(CQ出版社)の「踏切を音と光で演出する」に、今までなかった分野の記事を書かれて、これにすっかり魅了されました。
 助けを借りながら設計通りに組み立てましたが、さらに、方向指示器なども点灯させてリアル化したいという衝動に駆られて、他の方が作られた踏切でない回路を参考にしたり(初代記事参照)して、タイマーIC555をメインにした踏切警報機・遮断機(主にアレンジ)の回路を完成させました。
 しかし、もっと踏切装置全体のリアル動作化を目指したかったことと、ある方から“555”を使わずにできないないのかという話があったので、これを機会に、あえて“555”を使用せず、できる限りオリジナルで、プラレールと鉄道模型で共通に使える改良版回路の設計にチャレンジすることにしました。この回路の設計に当たっては、きっかけとなり、その後もいろいろとお世話になっている ちだ様に、ご協力いただきました。
※上記の記事は、現在「鉄道模型と電子工作」として、大幅に内容を加えて書籍化されています。

2.制御のためのIC選択と基本回路の設計

 さて、新しい「踏切警報機・遮断機の制御回路」ですが、何よりはじめに(勉強の)課題である“555”の代わりになりそうなICを、Web上でデータシートを公開している「東芝セミコンダクター社」のものから探すことにしましたが、現在使用しているものと互換性を保つため、電源を9〜12Vにしたいので、4XXXグルーブ(4000番台)を選びました。このグループは基本的な役割を果たすものが揃っている割には数も少ないので、データシートを見て探していくには、比較的やりやすいのも助かりました。
 その中で、これだと思ったのは“TC4538(BP)”というマルチバイブレータICで、タイマー的な働きや、動作のON・OFFの方法など、“555”以上のことを簡単にできると考えました。進行方向指示器や連続走行対応などを含む動作の基本部分はこれで決まりました。

メイン制御・方向指示器・踏切動作反応灯 遮断機制御・(安定化)電源
メイン制御・方向指示器・踏切動作反応灯 遮断機制御・(安定化)電源

 次に、これだけで実現できない部分のIC探しは、「CMOSの基本とノウハウ」(CQ出版社・著者 大幸秀成 氏)という書籍で、「標準ロジックICの機能と使い方」“AND,NAND.OR,NOR,ExOR,ExOR,ExNOR,INV”のゲートの論理記号と論理式と真理値表を参考にして、どのICを選択するかを決めていきました。

 複線の上下線方向(A・B)の信号をまとめることと、出力を確保するために、ORゲートの“4071”を選び、次に、踏切動作反応灯と特殊信号発行機用の出力には、遮断機も下りているという条件も加わるので、ANDゲートの“4081”を使って実現することにしました。
 残る遮断機の遅延回路は、やはり“555”を使わず、トランジスタは自信がないということで、先に登場の“4538”も考えましたが、今ひとつよい方法とは思えず、次は、ANDゲートの“4081”を試してみましたが、動作するものの反応が悪く、これも決定には至りませんでした。
 そこで、電圧の判別をよりよくするため、シュミットトリガであるものを探しましたがNANDゲートの“4093”しかありませんでした。これはNANDのため出力が反転してしまい、それを戻さなければならず面倒ですが、ここは選択がなくこれを使用することにしました。なお、シュミットトリガでないNANDゲートの“4011”も試してみましたが、当然すぎることとして同じく動作反応がよくありませんでした。
 シュミットトリガなどについては、“4584”を使ったときにその特徴を知り、動作の仕組みを「アイテムラボ」様、「ブレッドボードラジオ」様の解説を参考にさせていただきました。

 一応、これで完成なのですが、“4538”の特性で、センサONの後にOFFでスタートのタイミングは、動作に問題が生じることに気がつきました。
 動作電圧範囲の違う74HCシリーズですと、さらに種類が多く、希望通りの動作をする“74HC4538”があるのですが(“4538”と同じ動作の74HCシリーズは番号が違います。)、4000番台ではこれしかないので、センサ側をアレンジすることでこれを実現することにしました。センサのON-OFFを一瞬で行い、すぐに開始するように、抵抗・コンデンサ・ダイオードの3つの部品で調整しています。
 なお、コンデンサの定数をここで10μにしたのは、短時間で何度もON-OFFする可能性があることから、放電をより早くするためです。
 また、これらの部品の使い方は、“555”などで時間の調整を学んだもので、応用でいろいろなところで便利に使うことができると思います。“4538”や“4093”のところも同じです。

3.アドバイスを受けたところや、他の方の回路をそのまま使わせていただいた機器など

 一通りできたところで、ちだ様に見ていただきましたが、IC近くのスイッチの使い方(チャタリング対策)は、「ELM」様のサイトをご紹介いただいて問題点を確認し、また苦手なトランジスタの使い方(リレーの部分)と、それらの対処方法を(ちだ様に)アドバイスしていただきました。
 また、プルアップ・プルダウンについてもご指摘をいただき、プルアップ抵抗の仕組みと使い方については、「はじめる電子回路」様(このほかの解説も、私には理解しやすかったです。)を参考にさせていただきました。
 プルアップ・プルダウンといえば、IC決めのテスト過程で、「ハイ・インピーダンス(入力端子に何も接続されてないため“H”と“L”が正しく判別できない)」という状態をつくってしました。幸いICは壊れませんでしたが、出力がON・OFFを勝手に繰り返して不安定になったり、点灯したままになるなど、どんなことが起こるのかを知ることもできました。

警報音・アンプ・警報灯 aitendo MP3プレヤーキット KIT-MP3-AU6850B
警報音・アンプ・警報灯 aitendo MP3プレヤーキット KIT-MP3-AU6850B

 残るオリジナルでない部分ですが、警報音の再生装置は、(micro)SDガードを記録媒体にして、AVR・ATtiny85でつくる8ピンオーディオ“ELM 様”を microSD→SD で、また、遮断機用の電源には、三端子レギュレーターIC LM350T使用の安定化電源“秋月電子通商 様”、警報灯と検知センサーは“怪盗列車 様”の回路をそれぞれ一部アレンジして使わせていただきました。
 回路図などはWeb上で公開されていますが、ご利用の場合は、それぞれの作者様の約束に従ってください。なお、LM386を使ったアンプ回路(オリジナル)は、別の記事での紹介となります。

 このようなプロセスを経て、新しい踏切警報機・遮断機の制御回路ができあがりました。オリジナルな部分と掲載(転載)の許可をいただいた部分については、回路図を公開いたします。(センサー回路の訂正と定数を一部変更しました。2011/12/27)

踏切警報機・遮断機 回路図 Ver.1.1 −
踏切警報機・遮断機 回路図 Ver.1.1 PDFファイル

 ちなみに、警報音の出力部分については使用例なので、電源ONで警報音が鳴り出すものであれば、他の装置(回路)も使用できると思います。少しアレンジが必要ですが、aitendo の「MP3プレヤーキット」なども、使用できそうです。現在は、MP3-M/B-AU6850CAに変更になっています。(回路図を公開していますが、購入した方が安いと思います。)

 前回の回路では、「とにかく見よう見まねで作って動作させよう」がテーマな感じでしたが、今回は、「基本的な仕組みを学んで、回路を作ってみよう」という感じになりました。今回も、多くの方の知識や経験を公開していただいて、これを生かして、このようなものを作れたことに大変感謝いたしております。

ご注意

※掲載の回路については、実際に動作を確認していますが、使用条件によっては動作に支障があったり、回路図などに誤植などの可能性もありますので、十分ご確認の上、自己責任でお願いいたします。

※電子工作をする場合は、工具や部品の扱いを誤ると危険ですのでご注意下さい。

最終更新日:2011.12.27


Copyright (C) 2008-2013 Panda NEKO No.1 All Rights Reserved. (鉄道模型とおもちゃの電気室)

inserted by FC2 system